2012年4月30日月曜日

発熱 - Wikipedia


発熱(はつねつ、fever)とは、病気や疾患に伴う症状の一つ。医療の場などにおいてはしばしば熱発(ねっぱつ)とも呼ばれる。

[編集] 発熱の機序

体温は通常、脳内の視索前野および視床下部の体温調節中枢によって一定の温度にコントロールされているが、これが様々な要因によってその設定温度が高くなってしまうことにより生じる。熱中症とは異なる。感染などによる免疫系の活性化が原因となって生じる発熱に関しては、近年の研究によって、その発症メカニズムが解明されつつあり、以下のようなモデルが提唱されている。

活性化された免疫系細胞から放出される、インターロイキン1やインターロイキン6といったサイトカイン類が脳内の血管の内皮細胞に作用すると、内皮細胞内でプロスタグランジン合成酵素群が作られ、この酵素群の働きによってプロスタグランジンE2という物質が産生される[1]。アスピリンに代表される市販の非ステロイド性解熱鎮痛剤の多くは、プロスタグランジン合成酵素群のなかのシクロオキシゲナーゼと呼ばれる酵素の働きを阻害することで、プロスタグランジンE2を作らせないようにして発熱のメカニズムを抑えているのである。内皮細胞内で産生されたプロスタグランジンE2は脳組織の中へ拡散し、視索前野と呼ばれる体温調節中枢に存在する神経細胞の表面にあるEP3と呼ばれる受容体に作用する。このことによって、発熱(体温上昇)にかかわる脳内の神経回路が活性化される[2]


方法:咳止めシロップに高くなる

この発熱の神経回路の大部分は平時の自律的な体温調節にも関わるものであると考えられ、視床下部背内側核、(延髄)淡蒼縫線核、大縫線核および(脊髄)中間外側細胞柱などの脳・脊髄領域にある神経細胞が発熱シグナルの伝達に関わると考えられている[3]。この神経回路によって、発熱シグナルは最終的に末梢の体温調節器官へと送られ、熱産生促進および体表面からの熱放散抑制が起こる。この2つの作用によって体の深部温度を上昇させるのである。

脳・脊髄からの発熱シグナルによる末梢の体温上昇反応は、主に交感神経系と運動神経系を活性化することによるものである。褐色脂肪組織と呼ばれる効果器を支配する交感神経が活性化すると、その脂肪組織における代謝性熱産生が上昇する。また、皮膚内を走る血管の平滑筋を支配する交感神経が活性化すると、平滑筋が収縮し、血管径が縮小するので、体表面の血流が減少し、体表面からの熱放散が抑制される。一方、発熱シグナルによる運動神経の活性化は、骨格筋におけるふるえ熱産生につながる[4]

このような方法によって体深部温を上昇させる生理学的意義としては、

  1. 体内に侵入した細菌類の増殖至適温度域よりも体温を上げ、それらの増殖を抑える
  2. 体温を上昇させることで免疫系の活性化を促す

といったことが考えられている。

よって、むやみに解熱剤を使用をすることは、生体に自然に備わった防御機能を弱めることにつながると考えられるが、高温の発熱状態にある場合は、脳などへの障害を防ぐためにも解熱剤を投与することが適当である。


他人の痛みへの不適切な応答

[編集] 発熱の種類

[編集] 程度

一般に正常体温は36.5°C前後が最も多い。臨床的に発熱とは37.5°C以上のものを指す。各個人の体力や基礎体温の違いなどの理由により程度に差はあるが、概ね次のような傾向が現れる。

  • 微熱:~37.5°C。通常の生活や仕事をする分にはほとんど支障をきたさないが、体が少し熱かったりだるさを感じることもある。慢性炎症性疾患、代謝亢進、貧血、妊娠、結核、感染性心内膜炎などにより発症することがある。
  • 中程度の発熱:37.5°C~38.5°C。歩行・外出等、日常生活における活動はなんとかできるが、状況によっては体がふらつくなどの不安定な状態になることもある。また、頭痛や寒気を感じることもある。
  • 高熱:38.5°C~。歩行や立ち上がることが困難な状態となる。また急激に体温が上昇した際には強い寒気に襲われる。

[編集] 熱型

かつては診断上も重要といわれていた熱型だが、抗生物質の出現で型が保存されなくなってきている。


痛みのレベルは、今日
稽留熱(けいりゅうねつ、continuous fever)
一日の体温差が1°C以内で、38°C以上の高熱が持続するもの。重症肺炎や粟粒結核、腸チフスの極期、髄膜炎などでみられる。
弛張熱(しちょうねつ、remittent fever)
一日の体温差が1°C以上の変化をとるが、37°C以下にまでは下がらないもの。敗血症、ウイルス感染症をはじめ種々の感染症、化膿性疾患、悪性腫瘍、膠原病などでみられる。
間欠熱(かんけつねつ、intermittent fever)
一日の体温差が1°C以上の変化をとり、37°C以下にまで下がるもの。マラリアの発熱期など、弛張熱と同様の疾患でもおこる。
波状熱(はじょうねつ、undulant fever)
発熱時期と発熱しない時期とが区別されているもの。ブルセラ症、マラリア、ホジキン病、胆道閉鎖症、多発性神経炎、脊髄障害。
周期熱(しゅうきねつ、periodic fever)
別名、周期的発熱。規則的周期で発熱を引き起こすもの。マラリア、フェルティ症候群(フェルティ病)、関節リウマチ、脾腫など。
熱帯熱(ねったいねつ)
マラリアなど
三日熱(みっかねつ)
マラリアなど
四日熱(よっかねつ)
マラリアなど
毎日熱(まいにちねつ)
マラリアなど

[編集] 下熱(解熱)

下熱(げねつ)または解熱(げねつ)とは、病的に上昇した体温を下げること。


分利(ぶんり)
病気が徐々に下がること
渙散(かんさん)
高熱が数時間の内に平熱まで下がること

[編集] 他のバイタルサインとの連動

バイタルサインは意識、血圧、体温、脈拍、呼吸などの項目をいい、最初に測るものとして位置づけられている。発熱の場合は他のバイタルサインも連動して動くことが知られており、体温が1°C上昇すると脈拍数も10拍/min増加する。体温0.55°C上昇につき10拍/分の増加までは生理的な変化の範囲内といわれている。また発熱とともに呼吸数が増加(通常30回/分以上。代謝性アシドーシスに対する代償性頻呼吸のために起きる)したら敗血症を疑い、血圧がさがってきたら敗血症性ショックを疑う。例外として比較的徐脈を呈する疾患と呼ばれるものがある。比較的徐脈とは体温の上昇の割りに脈拍の増加が目立たない状態であり、腸チフスで有名である。あえて列記するのなら、ブルセラ症、髄膜炎、レジオネラ、オウム病、腸チフス、� �ルモネラである。


[編集] 発熱の原因

  1. ^ Matsumura et al., J. Neurosci. 18:6279-6289 (1998).
  2. ^ Nakamura et al., J. Neurosci. 22:4600-4610 (2002).
  3. ^ Nakamura et al., Eur. J. Neurosci. 22:3137-3146 (2005).
  4. ^ Nagashima et al., Auton. Neurosci. 85:18-25 (2000).

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